日本各地に「出雲」という地名や神社が存在するのはなぜか? 福岡県立大准教授で、島根県出雲市出身の著者が、出雲文化の広がりに迫る。福岡、石川、長野など各地を取材し、山陰中央新報に連載した記事を加筆し単行本化した。
愛媛では、日本三古湯にも挙げられる道後温泉を取り上げる。伊予鉄道後温泉駅にほど近い放生園(道後湯之町)にある足湯の湯釜には、出雲国造の和歌が刻まれている。道後温泉本館近くには、大国主命(おおくにぬしのみこと)と少彦名命(すくなひこなのみこと)を祭神とする湯神社があることなどを紹介し「四国の中で伊予の国は、出雲を原郷とする人たちの足跡が最も目立つ地」と指摘している。
日本各地に出雲と名の付く神社があるのは出雲を原郷とする人々が移住したからではないか―。こんな思いから全国の「出雲」を訪ね歩き、海の道などを伝い各地へ伸びた文化の広がりを解き明かした。
猪苗代町三ツ和の出雲神社や町内にある出雲壇という地名から、出雲の人々の移住伝承を探った。福島市の出雲大神宮、出雲大神を祭る会津地方各地の気多神社などについても、来歴を考察している。