島根県出雲市出身で福岡県立大准教授の岡本雅享さん(社会学)が、京都を含めた全国の「出雲」と名前が付いた土地や社寺を訪ね歩き、関わりをひもといた「出雲を原郷とする人たち」を出版した。
島根県や鳥取県で発行されている山陰中央新報で2011年から約4年9カ月にわたった連載などを書籍にした。全国にある出雲ゆかりの地を訪れ、地域の専門家らに話を聞き、関連する文献を基に執筆した。
京都のゆかりでは、亀岡市千歳町出雲にある出雲大神宮を取り上げ、神話に触れた。亀岡盆地が泥湖の底だった太古に、出雲大神が他の神と相談して盆地を豊かな農地に変えたといい、「出雲系の人々が丹波を開拓した偉業を語り伝えるものに他ならない」とする文献の記述を紹介している。
京都市では、下鴨神社境内の出雲井於神社や出雲寺、地名の出雲路などについての記載がある。古代・中世の愛宕郡出雲郷に由来するとし、背景を説明している。
本書は、出雲が朝鮮半島東南部や九州北部などにつながる海の道だったとし、「出雲文化が海の道を通じて拡がっていった(中略)」と指摘する。
岡本さんは「地域を区切って考えてしまえば、なぜ出雲の名前があるのか分かりにくいが、他の郷土史とつなげることで文化や人の動きが見えてくる」と話している。